1.育児休業の取得にあたって職場で工夫したことや、
不安だったことはありますか?
(取得者)谷井さん
課内では、週に1回のミーティングで製品の需給状況や製造数量の目標に対する現状の確認の場が設けられています。普段から課全体での情報共有が盛んに行われていることに加え、自分よりも経験の豊富な方に業務をお願いすることになったので、引き継ぎに時間を要することはありませんでした。しかし、長い間仕事を抜けるといろいろなことを忘れるのではないか、復帰後に今と同じように仕事を続けられるのかという不安がありました。社内にはすでに男性の育児休業を推奨する雰囲気がありましたが、取得を迷っていた時に「育休はどうする?」と課長から聞かれたことが大きな後押しになりました。また、実際に取得された方から勧められたことも大きかったです。取得を決めた後は人事の方を交えた面談があり、その時に「復帰後には同じ業務に戻る」という説明がありましたので、安心して休業することができました。
(上司)車古さん
2.上司として、どのように対応されましたか?
育児休業への思いもお聞かせください。
(上司)車古さん
谷井さんの育児休業については、3〜4ヶ月前から共有していました。課内でのジョブローテーションによって、彼の仕事をある程度理解している人が周りにいましたので、引き継ぎそのものはスムーズでした。実際に引き継いだ側はそれなりに仕事量が増えるので、そのフォローに気をつけたぐらいです。私の部下が育児休業を取得するのは今回で2回目ということもあり、すんなりと受け止めることができましたね。谷井さんは約3ヶ月間の取得でしたが、その頃はちょうど繁忙期でしたので、そういう時期に取得することについて本人がそれなりに悩んだのかなという思いもあります。復帰後、谷井さんは帰宅時間が早くなりましたね。意識的にそうしているのかなと思います。時間への意識の高さが周りにも影響を与えて、より良い雰囲気になっていけばと思っています。
(取得者)谷井さん
3.育児休業中は、どのように過ごされましたか?
(取得者)谷井さん
最初の1ヶ月は、育児全般は妻、家事全般は自分という形でスタートしました。それから徐々に「この時間はこっちが子どもの面倒を見る」というふうに、妻と相談しながら互いにストレスがかからないよう役割分担していきました。新生児の世話は分刻みで進んでいくので、逆算して今は何をしなければいけないのかを考える習慣が身につきました。仕事も同様に、目標から逆算して業務計画を立て日々実行していくという形にしていきたいと思っています。もし僕が育児休業を取得していなかったら、「私の精神的な負担がかなり大きかったと思う」と妻は言っていました。特に産後の女性は体力が戻っていなかったり、精神的にも不安定だったりするそうなので、2人で協力できることは間違いなくプラスだと思います。自分自身としても初めての育児だったので、仕事のことを一旦忘れて集中することができてよかったです。子どもの日々の成長をリアルタイムで感じることができました。
(人事労務担当)髙木さん(左) (人事労務担当)堀井さん
4.貴社でのこれまでの男性の育児休業取得状況や、
取得促進に向けた取り組みを教えてください。
(人事労務担当)髙木さん
2020年は、北陸コカ・コーラグループ全体で27名の男性社員にお子さんが産まれましたが、実際に育児休業を取ったのは1人だけでした。取得率は4%です。2021年より男性の育児休業取得の推進に力を入れ、管理職に対して制度理解を深めるための動画の配信を行うとともに、全社員に男性育休の周知を行き渡るよう経営会議で取り上げてもらいました。その結果、2021年は36名のうち16名が取得し、取得率は45%になりました。休業をしっかり支援できる体制にしていくには、上司の理解やサポートが必要不可欠です。2022年からは取得者本人と人事だけでなく、その上司を含めた三者面談を始め、本人から疑問点や不安点などを聞いています。まだ期中ではありますが、2022年9月末時点では、20名のうち13名と取得率が65%まで上がりました。
(人事労務担当)堀井さん
取得率の向上だけを考えると、「最低1日はとってね」という話になりかねないので、本質的な意味合いをしっかりと周知することを重視しています。
5.男性の育児休業取得を推奨されている理由についてお聞かせください。
(人事労務担当)堀井さん
育児休業を取るということは、奥さんと共に子どもを育てるということ。私の造語ですが、「協育」によって得られるものがすごく大きいのではないかと思っています。子どもの教育や医療、地域の待機児童の状況など、これまで奥さんに任せていたことが見えるようになり、家族としての意識が芽生えるのではないかなと思います。また、毎日子どもを見ていると、寝返りやハイハイだけでなく、立った瞬間にも立ち会えるかもしれません。子どもの成長をリアルタイムで見ることができると、すごく嬉しい気持ちになれます。それが、復帰後の仕事のモチベーションにもつながると思っています。今は仕事だけでなく、家庭について考える風潮が広がりつつあります。家庭での時間が減らないよう、仕事の効率を重視する考えを持ち、それを実行するような社員が増えつつあることは、会社としてすごくプラスになってきていると思います。別の取得者からは「取得後は1分でも早く帰ろうという気持ちになりました」という声も聞きました。採用場面でこういう話ができれば、男女問わず安心して入社しようと思える一つの要素にもなるのかなと思いますね。
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